USB Type-CだけれどUSB PD対応ではないスマートフォンの充電器選び


4年半使ったNTTドコモのSH-01Fが、動作が重かったり、スリープから復帰しなかったり、特定アプリでフリーズしたり、最近のアプリが動かなかったり(Android 4.4は古くて対象外というのが出てきた)したので、新端末を買うことに。今はいわゆる格安SIMなので、端末もSIMロックフリー……と思っていたら、状態のいい中古のSH-03Jを発見し3万円で入手。およそ1年落ちとはいえOSはAndroid 8.0だし、CPUはハイエンド系のSnapDragon 835でバッチリです。

SH-03Jは充電端子がUSB Type-Cで、今までのUSB Micro-B端子とは違うため、Type-Cの充電アダプタか、変換アダプタが必要になります。せっかくなら急速充電できるものにしようと調べてみたところ、どうやらSH-03JはType-Cで使える送電規格のUSB PDには対応していないようです(念のためNTTドコモに問い合わせ中 > 対応していました)。

※追記・修正:NTTドコモによると、SH-03JはUSB PD対応だそうですので修正します。これにより以後の内容は無駄になるわけですが、Xperia系なんかではUSB PD非対応のType-C端末があるという話も聞くので、参考までにそのまま残しておきます。

では、USB Type-CだけれどUSB PD対応ではないスマートフォンに最適な急速充電器は何なのか。これが思いのほか難題です。

・Type-Cケーブル一体型が手っ取り早い

SH-03Jは、Qualcommが策定したQuick Charge 3.0という急速充電規格に対応しています。NTTドコモが用意しているACアダプタ 06がまさにQuick Charge 3.0に対応しており、SH-03Jの推奨商品となっていますので、これを買えば間違いありません。NTTドコモの契約がなくても、量販店や通販などでも購入可能です。ただ評判を見ていると、割と壊れやすいように見受けられます。

Quick Charge 3.0に対応した充電器は、他にも多数あります。先述のACアダプタ 06は、充電器とケーブルが一体になっており、ケーブルや端子が痛むと充電器ごとゴミになってしまうのが難点です。であれば、充電器とケーブルが別々のものを選びたいのですが……。

・USB Type-Cの規格はややこしい

ここで問題が発生します。ざっくり言うと、USBという規格には細かい規定があり、規格外のものを使うと、機器の破損や発火等の危険があります。ところがType-Cの登場に伴って、USBの規格が大変ややこしいことになっており、規格外の製品があちこちに出回る事態になりました。製品作りのプロさえ見落とすものだけに、素人目には何が規格外なのか全然わからないという状態に陥っています。

・USB Standard-Aで出力するQuick Charge 3.0充電器のType-Cケーブル問題

Quick Charge 3.0の充電器というのは、大抵は充電器側の端子がUSB Standard-A(PCなどでもおなじみ、昔ながらの大きなUSB端子)です。端末側がType-Cであれば、片方がUSB Standard-A、片方がType-Cのケーブルを選べばいいということになります。

USB Standard-AとUSB Type-Cという組み合わせのケーブルは、USBの規格上、1.5A以上の電流を流してはいけない、ということになっています。充電機器側にこの規格を知らせるため、端子に56kΩの抵抗を入れる、というのがお約束です。

ところがQuick Charge 3.0では、もっと大きな電流も規定されています。例えば先述のACアダプタ 06の場合、5V時に3A、12V時に2.25Aの定格出力とされています。最大値ではありますが、12Vで2.25Aであれば27Wで充電できることになります。

ケーブルと充電器が別々のQuick Charge 3.0充電器を使った場合、56kΩの抵抗が入った規格的に正しいUSBケーブルを使用すると、電流は最大1.5Aに限定されます。よって最大出力でも12V時に1.5A、18Wしか充電できません。ケーブル一体型に比べて2/3の最大出力ということになります。それでも十分早いとは思いますが、低電圧で大電流を使うというオプションはなくなるわけで、なんだかスッキリしません。

ちなみに、ケーブルの抵抗を10kΩなど違うものにすることで、接続する機器からはより大電流を流していいように見えます。これならStandard-AからType-Cのケーブルでも1.5A以上の電流をかけられますが、先述の通り、“USB Standard-AとUSB Type-Cという組み合わせのケーブルは、USBの規格上、1.5A以上の電流を流してはいけない”ので、そのケーブルは規格外の製品ということになります。

・Quick Charge 3.0でType-C出力する充電器の粗悪品がType-Cケーブルを壊す

では充電器側がType-C端子になっているものを選べばいいかと、これもまた問題があります。両端がType-Cのケーブルのうち、USB 3.1の製品には、eMarkerというICチップを搭載することがUSBの規格に定められています。eMarkerは、ケーブルがどれくらいの送電性能を持つか等の情報を収めたチップで、USB PD利用時に必要になります。

USB PDの対応ケーブルには、最大5Aもの大電流を通せるものもあるので、Quick Charge 3.0の電流も性能的には対応可能です。しかし曲者なのが粗悪な充電器。eMarkerには本来5Vの電圧しか流してはいけないのに、うっかりQuick Charge 3.0の充電時と同じ12Vを流してしまうものがあります。想定をはるかに超える電圧をかけられたeMarkerは故障します。

粗悪品がどれかというのは、当然ながら製品情報を眺めていてもわかりません。ネット上でも調べている人がいますが、逆に言えば調べてみないとわからないわけです。

そもそも、Type-C端子から出力するQuick Charge 3.0充電器の製品は多くありません。Type-Cでの急速充電は、ノートPCなど多数の機器に対応できるUSB PDの方が本命なので、新たに出しにくいという事情もあるかもしれません。

ちなみに、USB 3.1ではなくUSB 2.0で、3A以下の電流までの対応であれば、eMarkerは搭載しなくていい、ということになっています(5A対応の場合はeMarker必須)。もしType-C出力のQuick Charge 3.0充電器を使う場合は、USB 2.0でeMarker非搭載で3Aまでは対応をうたっているType-Cケーブルであれば問題ないと言えます。しかしeMarker非搭載をわざわざうたう製品もないと思うので、3A対応の製品を博打気分で買うことになります。

・結論。Type-CでQuick Charge 3.0を使うのには何かしら問題がある

Type-CでQuick Charge 3.0を使いたい場合、Standard-A端子の充電器だと、USBの規格的に56kΩの抵抗入りケーブルを使うしかありません。この場合はQuick Charge 3.0のフルスペックが出せません。要するに、USBの規格に準拠するStandard-AからType-Cのケーブルは存在しない、ということです。

Quick Charge 3.0対応をうたうケーブルも存在しますが、それはUSBの規格に則らない規格外製品であるか、あるいは1.5A以上は出せないけれどQuick Charge 3.0は使えるという半分嘘の製品か、どちらかということになります。もし使うのであれば、56kΩの抵抗入りをうたう製品を選ぶのが安全です。

Type-C端子の充電器は品が少なく、粗悪品を掴むとケーブルを壊す危険性があるという問題があります。粗悪ではない充電器と、USB PD対応でもUSB 2.0で3AまでとされたeMarkerがなさそうなケーブルを探すのが安全だと思われます。例えば下記の記事では、eMarkerの有無を含めたケーブルチェッカーを使って調べられていますが、同名の製品でもマイナーチェンジしている可能性は否定できないので、最終的には自己責任と言えます。

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/1080233.html

高速かつ安心してQuick Charge 3.0で充電したいなら、充電器とケーブルが一体になった製品を選ぶべきです。耐久性は製品によると思いますが、NTTドコモの純正品以外にも、いくつか同種の製品は存在します。

・Quick Charge 3.0を諦めたら?

そもそもQuick Chargeというのは、USBの規格を超えた送電を実現するための独自規格なので、USBの規格に則ったQuick Charge対応機器という発想自体が間違っている、とも言えます。ただQuick Charge 4はUSB PDと互角性のある規格となり、Quick Charge 4+ではQuick Charge 3.0以下の下位互換性も持ちます(Quick Charge 4は下位互換性を持たない)。Quick Charge 4+は理想的な規格ですが、残念ながらまだ対応する充電器がほとんどなく、あっても高価です。

もう面倒だから古い充電器にType-C変換アダプタでやってしまえ、と試してみたら、充電が途中で切れました。変換アダプタがダメなのかと思いましたが、どうやらそうではなかったよう。充電器の出力が5V1Aだったのですが、SH-03J側はもっと急速に充電できるので、1A以上の出力を受け止めてしまい、充電器側が熱でシャットダウンしてしまいました。しばらくすると冷えてまた充電できますが、すぐまた発熱して充電が止まります。2Aくらいは出せる充電器が要りそうです。

今後のことも考えてUSB PD対応の充電器を使うという手もあります。スマートフォンがUSB PDに対応していなかったとしても、以前の規格であるUSB BC 1.2による5V/1.5Aでの充電が可能です。これならType-Cのケーブルが安心して使えますし、他にUSB PD対応機器があれば充電器を流用もできます。ただし充電速度はQuick Charge 3.0によるものに劣ります。

あとはどのくらいの急速充電が必要か、どれだけお金を出せるか、どれだけ製品を調べる暇があるか。なお急速充電はバッテリーへの負荷が大きいため、発熱などによりバッテリーの寿命を縮めるという話もあります。もちろんそうならないよう、Quick Chargeでは状況に応じて送電量を調整しているのですが、そもそも充電が遅ければそういった心配がないとも言えます。一晩充電しておけるという人は、あまり充電器にこだわる必要はありません(充電器がシャットダウンしては困りますが)。

・さいごに

USB PDに対応したスマートフォンを買いましょう。

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