wis's Game Review - No.1
ファイナルファンタジーXI
(ネットゲーム経験者向け)


■ シリーズ11作目にして初のオンラインRPG

 1987年にファミリーコンピュータで1作目が発売されてから15年。シリーズ11作目として誕生した最新作、ファイナルファンタジーXI(以下FFXI)は、国産初の3DMMORPGとなって登場した。2002年5月にPlayStation2用、同年11月にはWindows用のソフトが発売されている。

 
■ ゲームシステム

 ゲームシステムは、3DMMORPGとしてはオーソドックスな設計になっている。いくつかのジョブと種族、経験値によるレベルアップ、数十のエリアに区切られた世界、6人パーティによる戦闘。『日本製EVERQUEST』と表現するのが一番合うかもしれない。

 コマンド式による戦闘システムもEVERQUESTと酷似している。ただし、PKなどのプレイヤー同士の戦闘は不可。特殊設定のサーバや、任意のDuelシステムなども搭載されていない。

 
■ 数々の新要素

 当然ながら、本作は海外の既存MMORPGのコピーでは無い。それを示すように、数々の新要素が搭載されている。

 まず筆頭に上げられるのは『ジョブチェンジシステム』。キャラメイクの際に、戦士や白魔道士などのジョブから1つを選ぶのだが、これは後から任意に変更が出来る。レベルはジョブごとに保存されるようになっており、1キャラで状況や気分に応じて使い分けが可能だ。またゲームを進行する事で手に入る『サポートジョブ』により、2つのジョブを組み合わせて使用することが出来る。これも好みで自由に変更できるので、プレイヤーごとに個性が出て面白い。

 次に『ミッション』。FFXIには主軸となるストーリーがあり、このミッションを進める事で、プレイヤーが主人公となって話が進む。従来のMMORPGにも見られるクエスト(これはこれで本作にも存在するが)は、どうしてもストーリーが散発的になるが、それとは明らかに異質のものである。MMORPGにストーリーを持ち込むという発想は、コンシューマから続く作品らしさをうかがわせる。

 アイテムの売買に関するシステムは、『競売』『バザー』によって洗練されている。『競売』では、売却者が競売所にアイテムを出品し、それを他のプレイヤーが落札するというシステムである。出品をしておけば、外に出て戦闘していても、ログアウトしていても構わない。また買い手も欲しいアイテムをすぐに見つけ、かつ適正な価格で購入する事が出来る。また『バザー』は、各プレイヤーが露店を開くようなもので、アイテムに好きな値段を付けて簡易の店を開く事が出来る。プレイヤーが動いても構わないので、いろんな場所を歩きながら売る事も可能だ。これらの機能により、MMORPGでよく見られる、アイテム売買の声でチャットが流れていくというような状況は無くなっている。

 またこれは当然の事だが、ゲームはキャラクタ名などの一部を除き、全て日本語で進行する。海外のMMORPGに慣れたプレイヤーでも、チャットなどで日本語を使えるので、プレイに気楽さは感じられるだろう。

 
■ パソコン環境とグラフィック

 Windows版FFXIは、かなりのハイスペックPCを要求する。必要環境は、PentiumIII-800MHz、メモリ128MB、ビデオメモリ32MBのGeForceシリーズ、HDDの空き5GB、となっている。推奨環境になると、Pentium4、メモリ256MB、ビデオメモリ64MBのGeForce3。MMORPGファンには物凄いスペックと言う程ではないかもしれないが、かなりヘビーな処理が求められているということは想像出来るだろう。なお、ビデオカードはGeForce系以外はサポートされていないが、RADEON等のDirectX8.1対応ビデオカードであれば、動いたと言う報告は多数ある。FFXIのために新たに購入するのであれば、もちろんGeForce3、または4Tiをお勧めしておく。

 実際のゲーム画面のほうは、全体的にややぼやけたような印象を受ける。しかし3Dモデルの書き込みは非常に細かい。特にキャラクタのモデルなどは、過去のMMORPGとは比較にならない繊細さだ。カメラをズームにすれば、鎧の細かい部分まで動いているのが分かるし、顔はその表情までもが見て取れる。技や魔法のエフェクトも、決してチープな印象は受けない。他にもBumpMapなどの3D表示機能にも対応しているので、推奨環境であればより美しいグラフィックが表示される。要求するPCスペック分のグラフィックは十分楽しめるだろう。

 ただし、キャラクタのモデルが繊細で美しいための弊害と言うべきか、プレイヤーが集中する場所では急に処理が重くなる。混み合っている狩場などでは、チャットやコマンド入力の反応にまで影響してしまうのが問題だ。

 通信環境については、ISDNなどのナローバンドでも十分に遊べる設計になっている。ただし、バージョンアップによるパッチはかなりの量になる事があるので、ADSLなどのブロードバンドでプレイする事をお勧めしておく。

 
■ プレイ上の問題点

 いろいろな挑戦的な試みや斬新なアイデアが盛り込まれたFFXIであるが、開発元のスクウェアにとっても初めてとなるMMORPGだけに、手が行き届かない箇所もいくつかある。

 キーボードの設定が、ほとんどデフォルトから変更する事が出来ない。PCゲームに慣れたプレイヤーであれば、自分なりに設定をカスタマイズしていきたい所だろう。しかし移動などの基本的な操作部分どころか、各種のショートカットキーすらも変更が出来ない。確かにデフォルトのキーアサインは割とよく出来ているし、これに慣れてしまえばいいのかもしれないが、やはり変更出来るに越した事は無い。

 コマンドに対するレスポンスが悪いという点もある。キャラクタの立つ・座るの動作は異様に反応が鈍い。他にもチャットログの表示が遅く、ダメージを受けたときのゲージの減りとチャットログ、それに画面の動きがどれも合っていない。これは誰もがストレスを感じる点だろう。

 ゲーム内容の問題点としては、ジョブと種族の格差が大きすぎる事が挙げられる。前衛は挑発が使える戦士が飛びぬけて優れていて、その他のジョブはどうしてもパーティで敬遠されがちになる。またHPの少ない種族での前衛、MPの少ない種族の魔法使いなどは、アイテムで補正をしても、得意な種族には到底追いつかない。もっともプレイヤーは任意にジョブを変更出来るのであるから、その点は覚悟しろ、ということなのかもしれないが。

 
■ これからのバージョンアップに期待

 いくつかの問題点も抱えてはいるが、FFXIはバージョンアップにも積極的な姿勢を見せている。現状では大体月に一度のペースで、ゲームバランスを変えるほどの大きな修正が行われている。これはある意味、まだゲーム自体が未完成であることを示すものでもあるが、今後に期待が持てることも確かだろう。エリアが少ないために夜間の込み具合が酷いという問題や、シリーズお馴染みのジョブもまだまだ登場していないという点もあるが、これも追加ディスクで増えていく事はほぼ間違いない。

 現状では十分な完成度と言えない面もあるが、まだまだ化ける要素も多くある。何しろ国産初のMMORPGでもあることだし、先行投資のつもりで遊んでみるのも悪くないのではないだろうか。