第1回「電車に乗り小説を読了した時点で下車し周辺を散策するミステリートラベル」に関する結果と課題

第1章 : 企画考案に至る経緯について

本企画は、筆者が電車に乗り、小説を読み始め、読み終えたところで下車し、その駅近辺を散策する、新しいスタイルの旅を提案するものである。

これは筆者本人の下記のような性質・性格をもとに考案されたものである。

1. 筆者は読書好きである
特に長編小説を好む。しかしサラリーマンを辞め、通勤時間が無くなったことで、日常的に読書をするための時間が失われてしまった。そのため、何かしらの形で読書をする目的を得たいと考えていた。

2. 筆者は極度の方向音痴である
たとえ手元に詳細な地図があっても、目的地に辿りつけない、目的地を通り過ぎるのは日常的である。GPS搭載スマートフォンのおかげでようやく改善されつつあるが、これでも完全ではない。

3. 筆者は冒険好きである
行ったことがない場所に行ったり、やったことがないことに挑戦するのが大好きである。その分苦労も多いが、それを含めて楽しもうとする性質がある。

4. 2および3の複合的理由
2より、道に迷うということは、そこは知らない場所である。そして3より、知らない場所を探索することを好む。つまり、“道に迷うことを楽しむ”ということが導き出される。そしてこれは事実である。

以上の要件より、全てを満たす形となる本企画が考案された。

第2章 : 企画内容

具体的な企画内容は下記のとおり。

・まだ手を付けていない小説を用意する。

・最寄り駅、ないし出発駅と定めた駅から電車に乗る。この時、行先を大まかな方針として決めておく(例:北、海沿い、○○線沿い等)

・電車に乗ったら小説を読み始める。読み終えたら下車し、その駅近辺にある名所・名物を辿る。

・乗り換えは可。事前に決めた方針に沿って動く。

・下車した後、スマートフォンで周辺の情報を調べ、目的地を決定する。

以上を定めた上、第1回「電車に乗り小説を読了した時点で下車し周辺を散策するミステリートラベル」を試行した。

第3章 : 試行結果

用意した小説は、時雨沢恵一氏著「キノの旅 XVI the Beautiful World」。全248ページ。今回は出発時刻が16時頃と遅かったことと、第1回の試行であることを踏まえ、およそ半分のページで下車とした。

乗車駅は筆者の最寄り駅であるJR小岩駅。総武線で千葉方面で向かい、海に出る路線を選ぶことにした。約40分経過したところで千葉に到着し、1度目の乗り換え。当初は銚子方面に向かうつもりだったが、この時点で既に70ページを読み終えていたため、内房線に乗り換えた。乗り換え後、およそ25分で半分を読了し、下車した。

降車駅は、JR内房線の八幡宿駅。周辺の名所・名物を検索してみたが、注目に値する情報は見当たらず。やむなく駅周辺を散策する。この辺りはほぼ住宅街で、駅から2~3分歩けば農地も見られた。駅前にスーパーや数店の食事処と、小規模な商店街が見られた。暮らすには不自由しないが、観光地としては不適であった。

第4章 : 試行をふまえた企画の問題点

試行によって、本企画における問題点がいくつか発見された。

1. 時間的制約を受ける
本来、本企画はある程度遠い距離を旅することで、見慣れない土地の文化に触れることが目的である。しかしながら、小説の半分程度だと、場合によっては1時間ないしそれ未満で済んでしまうことがあり、十分な距離を稼ぎにくい。特に今回のように出発時刻が遅れた場合、到着後の行動も制約を受けるため、なるべく早い時刻より実施すべきである。

2. 鈍行による移動は不適
今回は初回ということで、極端な遠距離にならないよう鈍行列車を選んだ。しかしこれによって結果的に、1で問題とした距離の短さに加え、降車駅が観光に適さない住宅地や人の少ない土地である可能性が高くなってしまった。本企画の実施においては、特急や快速など、移動距離が長く、ある程度大きな駅に止まる電車を選ぶべきである。ただしその場合、運賃が高くなるという別の問題が発生する。

3. 到着駅の選択権がない
読了時点で下車するという企画上、実施者が意図的に駅を選ぶことはできない。それが本企画の面白さでもあるのだが、今回のように観光地として不適な場所に到着する可能性を常にはらむことになる。その対策として、読了後に先の駅を確認し、ある程度大きな駅を選ぶなど若干の選択を許可する方法もある。ただしこれは2により大部分が解決できうるため、決定ではなく課題として考えておくべきものとする。

第5章 : まとめ

以上のように、第1回「電車に乗り小説を読了した時点で下車し周辺を散策するミステリートラベル」は失敗というべき内容で、いくつかの問題が洗い出された。しかしながら、見知らぬ街を歩くという体験は実現できたし、都心の生活では見られない、落ち着いた風景を堪能できたという満足感がなかったわけではない。

また一見住宅街であっても、何かしらの名所・名物がないとは限らない。駅の観光案内を調べたり、駅員に名物を聞くなどすることで、ある程度の精度は上げられるだろう。

そして最も大事なことは、間違いなく小説を読めるということである。満員電車になれば話は別だが、座席に座って本を読める環境であれば、十分に読書に集中できる。特に「集中して読まなければ、いつまでも降車できない」という思いからか、普段以上に読書に没頭できたと感じた。つまり目的の半分は十二分に達成されていると言える。

“旅の空き時間に読書をする”という当たり前のスタイルではなく、“読書の時間を旅にする”という新しいスタイルに挑戦したことには、十分な意義が感じられる。旅の結果に寄らず、その1冊と旅の印象が結びつくことで、作品に対する思い入れも大きく増すことは間違いない。

今回の結果を踏まえて、ぜひ新たな企画挑戦者が現れてくれること願う。

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