E3 2012レポート裏話(5) なぜWii Uのパーティゲームがアピールされたのか


「Nintendo All-Access Presentation @ E3 2012」レポート
宮本茂氏が語るWii Uの“テレビからの自立”と「ピクミン3」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20120606_538050.html

4本目。E3初日に行なわれた任天堂のプレスカンファレンスのレポート1本目です。朝からカンファレンスを見て、夕方にある別のイベントまでに記事を1本仕立てようということで、プレスルームでVAIO P叩いて仕上げました。本当はもうちょい書きたかったのですが、昼間も普通に取材があったので、このくらいが限界。

宮本茂氏の話はいつも楽しくて、意図が明確です。今回もテレビへの依存から脱却するというビジョンをはっきり示しました。

問題は、そのビジョンが古いということ。話を信用するなら、テレビからの脱却というキーワードが定まったのは4~5年前。それから現在までに、(少なくとも国内では)ゲーム機は携帯機が主流と言ってもいい状態になり、さらにここ1~2年でスマートフォンにより、家庭用ゲーム機で遊ぶ時間が奪われました(私はスマホにゲーム市場が食われたとは思っていません。結果は同じですが)。

それについては先日のストリーミングでも、社長の岩田聡氏が、同じ部屋にいる家族が各自が持つデバイスに集中してしまう状況を「Alone Together」と呼んで注意喚起しています。その解としてのWii Uだと言うわけですが、それはさっきの宮本氏の話と食い違いを感じます。Wii Uテレビから脱却する、テレビがなくても遊べるということは、結局は「Alone Together」を加速するだけの代物です。

だからこそ任天堂は今回、Wii Uを使ったみんなで遊べるゲームをしつこいほどアピールしたのだと思います。コアゲーマー向けのゲームも動きますよ、とは言うものの、そこを強調すると、「Alone Together」を加速し、同時に手軽さで勝るスマホに遊びの時間を奪われるという状況を打破できないからです。何せWii Uは、テレビからは自立できても、大きなゲーム機からは離れられない、自立できないのです。

もっとも、その答えとしてはゲームボーイから3DSまで続く携帯ゲーム機があります。これはもうとっくに巨大なゲーム機から自立しています。しかしながら「Alone Together」を加速するデバイスでしかなく、電話として常に持ち歩くという特性のあるスマホには手軽さや「常備性」で及びません。

5年前は「テレビからの自立」というアイデアで、Wii Uは少なくとも1世代分は他を出し抜けると思っていたはずです。しかし状況はゲーム業界の外からの影響で激変してしまい、新たな切り口を必要としたのでしょう。その5年間における任天堂内の変化が、当初について語った宮本氏と、今を語った岩田氏の内容のズレだと思います。

任天堂がこの先も一定の地位を得ていくには、Wii Uによって、家族で楽しめる新しいエンターテイメントを「提供するほかない」状況なのだと思います。Wii Fitなどで既に成功を収めているわけですが、そこもNikeなど他に侵食されてくるわけです。ハードは古くても、遊びは常に斬新で最先端でなければならない、というのが任天堂の宿命なのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください