ライティング・スローガン(1) ゲームライターになるな!

 8年と少々、ゲームメディアで編集・記者をやっていて、ライターになりたいという方や、もっとうまくライターの仕事をしたいという方の声を多く聞いてきました。その都度、色々なアドバイスをさせていただきましたが、それをまとめて書くということがなかったので、フリーランスになった自分自身への覚書という意味も込めて、少しずつ書いていこうと思います。

第1回は、ゲームライターになりたい方へのお話です。ここで言うゲームライターというのは、ゲーム雑誌などメディアで執筆するライターのことです。「他人になるなって言いながらお前がやってんじゃん」というご批判はごもっともですが、まあそれは私がアホだということで流していただいて、理由をお聞きいただければ。

私自身、10年ほど前には、「ゲームライターになるには」とネットで検索して情報を集めたことがあります。ただ、当時においても、10年経った今でも、今の私が最も伝えたい話は見つかりませんでした。それが、タイトルにした「ゲームライターになるな!」というメッセージです。

なぜゲームライターになるべきではないか。一言で言えば、過酷な仕事だからです。過去にいろんなゲームを遊んできたから、その知識が役に立つ。何よりゲームが大好きだから、それを仕事にできるなら間違いなく天職だ! ……と思ってゲームライターを始める人は数多くいらっしゃいます。それは間違いではないのですが、それでも私はオススメしません。

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1. 好みじゃないゲームを延々やらされる

まずよく言われるのが、好きなゲームができるとは限らないということ。みんなが好みで得意なゲームを分担できればいいんですが、仕事なのでそうもいきません。嫌いなものでも延々遊んで、調べて、原稿を書かねばならないこともあります。特に攻略担当になると、何日も淡々とした作業を繰り返してデータを出すだけということもあり、好きなゲームでもかなり精神的に消耗します。

2. 徹夜も当たり前

次に、体力的にきついです。私のWEBメディアでの経験話としては、昼間にイベントを取材し、夜に原稿を書くというのはよくあることで、そうなると1日8時間労働で終わるなんてことはまずありません。東京ゲームショウなどでは、朝から夕方まで取材詰めで、原稿を夜から朝まで書き続け、翌日も会場で取材詰め……というのを数日続けます。もし倒れても、その取材をしたのは自分1人ですから、代わりに原稿を書いてくれる人はいません。

3. 原稿を書かねばならない

また原稿を書くということ自体も適性が求められます。ある程度まともな日本語を使えることや、それなりの語彙力が求められるなど技術的なことは当然あります。それに加えて、商品やイベントについて、何を伝えねばならないのかという着眼点、それを読者様に楽しく伝えられる表現方法も磨かねばなりません。それらを締め切りという限られた時間内に作り終えねばなりません。時間がかかったところで残業代は出ません。

4. 低収入

それだけ頑張って、結果として得られる収入は、少ないです。同じ時間働いている同年代の社会人には到底及びませんし、下手をすればコンビニでバイトしたほうが儲かる程度になることもあります。特に仕事を始めたばかりだと、勝手がわからず、調べ物や執筆にも時間がかかります。

5. ゲームをやる時間がない

そうやって仕事に追われていると、自分が遊びたいゲームを遊ぶ時間がなくなります。普通の会社員の友達のほうが、よほどいろんなゲームを遊んでいる、なんてのもよくあることです。ゲームの情報は入ってきますし、特定のゲームをひたすらプレイすることになる状況もありますが、忙しい分だけ自由に使える時間はなくなりがちです。仕事を減らせば時間はできますが、そうなると食うに困り、ゲームを買うどころではなくなります。

6. 将来性がない

そしてそれ以上に恐ろしいことは、先がないということです。ゲームライターを漫然と10年続けることで身につくスキルは、極論すれば、いろんなゲームの原稿を書けることだけです。他の業界でのつぶしが利かないので、ゲームライターはきついなと思って転職しようとしても、その口は簡単には見つかりません。

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結果としてゲームライターの生活は、時間的にも収入的にも安定せず、特殊なスキルが求められるにも関わらず将来性がないという、客観的に見て極めて割に合わない仕事です。若いうちは何でも経験と思って、好きなことを仕事にしたいと思うでしょうけれど、それでゲームライターを選んで幸せになれるかというと、私には到底そうは思えません。

ですので、私がこれまで会ったゲームライター志望の方々には、まず最初に「ゲームライターは止めとけ」とお伝えしてきました。とはいえ、応募するなりツテがあるなりで、現役の編集と顔を合わせるくらいのところまで来ている方々ですから、それでもみなさん「大丈夫です! 頑張ります!」とおっしゃいます。そして現実として、何年も続けて仕事ができるような新人さんは、私のケースではせいぜい2割くらいです(これは私が編集として反省せねばならないところでもありますが……)。

ゲームライターを目指しているみなさん。真っ当な生活、真っ当な人生を送りたいのであれば、ゲームライターは諦めた方がいいです。もっと楽で健全で、いっぱいゲームを遊べる生き方はいくらでもあります。

しかしそれでも、どうしてもゲームライターになりたい! とおっしゃる方には、私もそれ以上は止めません。自分の人生は自分のものですから、責任は自分で取って、生き方を見つけてください。次回以降は、先に進む覚悟を決めた……決めてしまった方のために、ライター業やライティングに関して、私が思うことや、過去にライターさんに伝えてきたことを書いていきたいと思います。

(このシリーズは ライティング のカテゴリにまとめていますので、右にあるリンクからどうぞ)

ライティング・スローガン(1) ゲームライターになるな!” への4件のコメント

  1. 的確かつ本音が書いてあって、凄く面白かったです。
    こういう話って、現場にいればわかることでも、なかなかblog記事としてまとめていなかったり、まとめてあっても文章がおかしかったり、バイアスがかかり過ぎていたりしますからねー。

    いい記事だと思いました。
    続きも楽しみにしています!

  2. ご覧いただきありがとうございます。業界的にはまだまだ若輩者の部類だと自覚していますが、少ない経験なりにも苦労した分、これから始める方には楽してほしいなと思うので、少しずつ書いていこうと思います。

  3. 拝読いたしました。まったくもって、うなずくことばかりです。
    そもそも、今はもうゲームライターを目指すという考え方自体が時代遅れだと思いますね。ビジネス的にうまく回っていないという意味でも、誰でもネット環境があれば自らメディアを作れるという意味でも…。

  4. 帰結するのはゲームメディア自体が落ち目ってところなんですよね。10年戻ればもっと健全で、20年戻れば天国だったみたいな話も耳にはしますが、いまそれを言ってもどうにもならないわけで。とはいえ、ゲームライターという仕事の「やりがい」は不変なはずです。聞くところによればゲームライターを養成する学校まであるそうなので、若い方が入って来られる世界は用意したいなあと思います。学校ではこういうことは教えていないと思いますが……。

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