以前勤めていたGAME Watchの編集後記で、REGZA Z1シリーズのゲームモードとフレーム遅延について書いたのですが、割と面白いことを書いていたので、補足も入れつつこちらに載せておきます。原版は既に電子の海に消失しています……。
(2010年10月22日、GAME Watchの編集後記より)
「Z1」シリーズについては私も記事を書いていまして、特にゲームモードに言及しています。この中で、遅延時間が「約19ミリ秒(約1.2フレーム)」と書いていますが、「なぜもっと縮まらないの?」と思った方も多いと思います。これは、液晶パネルが120Hzの入力にしか対応していないのが理由だそうです。
倍速処理を搭載している液晶テレビでは、60Hzの映像を倍速化して120Hzにしてから見るのですが、その処理を行なうためには、前後のフレームの映像比較が必要になります。その結果、出力される映像は、「次フレームの信号が入力されてから、前フレームを表示する」という順番になります。ですから倍速処理を行なう限り、必ず1フレーム以上の遅延が発生することになります(理論的には、前フレームを先に表示しながら補間処理を行なうことで、あと0.5フレームは短縮できますが、絵作りのためには前フレームも含めてトータルで処理を加えたいので、やはり1フレーム遅れるのが常道だと思われます)。
「じゃあ倍速処理せずに60Hzで入力して表示すればいいじゃん」と言いたいところですが、前述のとおり、パネルが120Hzの入力のみ受け付けます。ですから、どうあっても補間フレームを生成しなければいけないのです。そういう前提で考えると、遅延が1.2フレームというのは極めて優秀だということがわかります。
が、ここでさらに突っ込んで、「倍速処理のないテレビなら、その分遅延がないのでは?」と思った方。それ正解です。REGZAの場合、倍速処理のない60Hzパネルを採用したモデルならば、1フレームの待ちが発生しない分だけ早く、コンマ数フレームという極めて低い遅延で済むそうです。
もちろんこの場合、映像処理や解像度などのスペックが低下するというデメリットもありますし、どのモデルがどの程度の遅延というデータは聞いていないので、用途から総合的に判断する必要があります。ともかく、究極のゲーム用テレビを考えるならば、「倍速処理をそもそも積んでいないモデルを選ぶ」というのも1つの選択肢である、ということです。まあ、アクション性の高いゲームをやらなければ、どうでもいいことなのですが……。
(以上、引用終わり)
補間フレームについては、()書きした理論値の部分がポイントです。間を補うフレームを作るわけですから、前と次のフレームを参照する必要があります。入力された信号はすぐに表示できても、その次の補間フレームを生成するには次のフレームの映像入力を待たねばなりません。それが入ってきてから補間フレームの生成処理を行い表示するということです。
前フレーム入力>前フレーム表示>次フレーム入力>補間フレーム生成>補間フレーム表示>次フレーム表示
こういう順番になります。前提として各フレームの表示は120Hz刻み(60Hzで言うところの0.5フレームのタイミング)になりますから、前フレーム、補間フレーム、次フレームが同じ間隔で並んでいなければいけません(でないとパネルに表示できない)。
補間フレームを生成するには次フレームを見なければいけないので、補間フレームの表示は必ず0.5フレーム+映像生成処理にかかる時間分遅れます。
今は映像生成処理が非常に高速化されたおかげで、最新型のREGZAは遅延を0.6フレームにしているそうです。
……さて、ここで気になることが1点。じゃあフレーム補間処理をしないという選択肢はないのか。補間フレームに前フレームと同じ映像を入れるという処理をすれば、液晶パネルへの入力信号は120Hzにしつつ、60Hz相当の遅延のない映像を入力できるのではないかと思います。
これが一番シンプルかつ間違いないし、ゲーム開発者がこだわった絵作りを補間フレームで勝手に改変しないという意味でも確かなゲームモードじゃないかと思うのですが、そう簡単にはいかないのでしょうか?
そして倍速処理そのものにももう1つの可能性があると思います。次フレームを参照せずに補間フレームを生成する方法です。前フレームと、それよりさらに前のフレームを参照して、その次の映像の変化を予想することで補間フレームを生成する方法です。次フレームを参照しなければ補間フレームが作れないということはないんじゃないかなと思うわけです。
普通、映像を鑑賞するだけなら映像の遅延など気にしません。それに次のフレームを見た方が補間フレームで生成できる映像の精度が高いのは明らかです。こんなの映像を見る人も、ゲーマーも、期待している機能ではないと思いますが……どうしても補間映像を作りながらも遅延を限りなく0にするという方法を探るなら、ありえないことではないんじゃないかなと思います。
後者はともかく、フレーム補完処理をせず、単純に前フレームを2度表示するアイデアはありえると思うんですよね。なぜそれをしないのかがわからないです。機会があれば技術者の方に聞いてみたいですね。