花粉症はどんなに頑張って対処しても、花粉から完全に逃れることはまず不可能です。では花粉症が出てしまったらどう対処するか。その症状を軽減するために、薬を使うことになります。
花粉症用の薬と一言で言っても、その種類はさまざまあります。薬局で簡単に買えるものから、医者で処方してもらえるもの、さらには花粉症の根治もありえるという最新の治療もあります。今回はそれらの情報をまとめてご紹介します。
1. まず耳鼻科・内科に行こう
大前提として、花粉症を疑う症状が出たら、一度医者にかかってください。耳鼻科が一般的ですが、アレルギー症状の診察という観点でいえば内科でも問題ありません。
ここで自分に何のアレルギーがあるのか検査してもらいましょう。私の場合、スギ花粉症が極めて強度にあり、ほかにもヒノキやイネ、蛾の燐粉にもアレルギーがあること、食品系のアレルギーはないことがわかりました。まず己を知ることで、いつ何に対処すべきかが決められます。検査費用は私の場合で5000円近くかかりましたので、そこだけはご注意を(金額は検査内容によっても上下すると思われます)。
そうはいっても医者にかかるのは時間的に大変、症状はそんなに酷くないので医者に行くほどでもない……という方も多いと思います。それでも、診察自体は大した時間はかからないので、休日に開いている病院を探して行ってみることをオススメします。後述しますが、市販されていない処方薬には非常に有効な薬もあります。
2. 薬局で手に入る薬ってどうなの?
それでも医者はメンドクセーのよ! という方は、薬局を頼ることになります。薬局で手に入る花粉症の薬と言えば、効くけれど副作用の眠気が酷い、という印象を持っている方が多いと思います。これは事実ですが、最近は少々事情が違います。
一昔前まで薬局で売られていた花粉症の薬……正しくは「抗ヒスタミン薬」と言いますが、これは「第1世代」と呼ばれる薬です。これは前述のとおり、即効性ながら副作用が強く、眠気が出るというものです。こんなもの飲んだら仕事にならん、運転もできん、ということで飲むのを止めてしまった人もいるのではないでしょうか。
しかし最近、薬局で売られる薬にも、眠気の少ないタイプのものが出始めました。それが「第2世代」と呼ばれる抗ヒスタミン薬です。以前は医者の処方箋がないと入手できない成分の薬でしたが、近年少しずつ市販されるようになりました。
中でも最近発売されたのが「アレジオン」という薬。私も10年くらい前に医者に出してもらって飲んでいた薬で、それまでのものと比べて格段に眠気が少ないものです。市販薬の場合、処方してもらえるものよりかなり高価だったり、含有成分が少なめだったりという違いはありますが、忙しいさなかに急ぎ欲しい時にはいい選択肢になると思います。
ただし「第2世代」の薬にも注意点はあります。まず副作用が完全にないわけではありません。同じ薬を飲んでも、全く眠気を感じない人もいれば、強い眠気を感じる人もいます。これは体質や環境(集中力の要る仕事をしているなど)によっても左右されるので、実際どうなのかは飲んでみないとわかりません。飲んでダメだと思ったら服用を中止しましょう。
あともう1つ、「第2世代」の薬は即効性より持続性に注目されています。飲んですぐ、それなりの効果は感じられますが、より効果的に使うには、定められた用法できちんと飲み続けることが大切です。理想的なのは花粉症のシーズンが始まる半月ほど前から飲むことと言われています。
3. 医者の処方で最新の薬を手に入れる!
「第2世代」の薬はアレジオン以外にもありますが、その多くはまだ市販が認められておらず、医者の処方箋が必要です。しかしその分、市販薬よりも優れた効果を持つ、新しい薬も出てきています。
私が最近飲んでいるのは、「アレグラ」という薬です。これは臨床試験において、ニセ薬との比較で副作用による眠気が認められなかったことから、眠気に関する注意書きがありません(絶対に眠気が出ないという意味ではない)。現在のところ、眠気の注意書きがない薬は、「第2世代」の中でもこれと「クラリチン」しかありません。
私自身、いくつか薬を試した中では、今のところこれが最も眠気が少ないと感じています。ただ弱点もあり、効果がゆるやかで実感しづらいことと、1日に朝晩2錠飲まねばならないこともあって「第2世代」の中でも特に高価、というのがあります。それでも保険が利くので、1カ月分出してもらっても2000円くらいで済みます。
それ以外にも「第2世代」の薬はあります。最近登場した「ザイザル」という薬は、同じく「第2世代」の「ジルテック」という薬の改良版のような存在で、化学的には「ジルテック」の2倍の効果があると言われます。「ジルテック」と同じ効果を期待すれば、副作用が半分で済む、とも言えます。「第2世代」の中でもさらに進化があると思うと、期待が高まります。私も今度試してみようと思っています。
繰り返しますが、薬の副作用は人それぞれ出方が違います。最新の薬のほうがいい、と決まったものではありません。色々試して、自分に合う薬を探すしかない……というのが現実です。医者のオススメやネットの評判などを参考に、自分に合う薬を探してみてください。
あと医者によっては、注射による治療を勧めてくることもあります。1発で1カ月持つよ! と言われるようなものはステロイド注射です。これは効果てきめんですが、副作用があった場合は1カ月もの間、逃げ場がないということです。薬の副作用で何度も辛い思いをしている私にはとても怖くて手が出せません。他にヒスタグロビン注射というのもあります。こちらは週1~2回の接種をしばらく続ける手間があるのと、やはり副作用があっても数日間はどうしようもないという点があるので未経験です。飲み薬の効果が十分になってきたことを考えると、リスキーな気がしています。
4. 花粉症を根治できる(かもしれない)減感作療法
これまでは、「花粉症は治らない」という前提で話をしてきましたが、最近では完全に治るかもしれないという治療法があります。減感作療法(げんかんさりょうほう)と言います。これは簡単に言えば、体に少しずつアレルギーの原因となるもの(スギ花粉のエキスなど)を取り入れていき、長期間かけてアレルギー反応をなくしていこうというものです。
取り入れる方法は2つ。現在メジャーな方法は、注射によるものです。週に1~2回の注射から始めて、だんだんと期間を延ばして1カ月に1回程度になります。これで2~3年程度治療を続けると、花粉症の症状が出なくなる、あるいは症状が大幅に軽減されるという人が7~8割ほどになるそうです。100%ではないので注意が必要ですが、十分期待できる高確率だと思います。
保険も適用されるので、1回1000円かからない程度(最初に詳しいアレルギー検査が必要なので初期費用は5000円くらい?)。ただし治療を行う医者があまり多くないので、近くに病院があるとは限らないというのが欠点といえば欠点です。
しかし注射を受けに医者に通うのが大変、というのもあります。そこで最近注目されているのがもう1つの方法、舌下減感作療法です。エキスを含ませたパンを舌の下に置き、2分ほどそのままにします。それにより、体内に少量のアレルギーのエキスを取り込むという方法です。
やっていること自体は注射によるものと同じことで、効果も同程度と言われています。それでいて注射を受けに行く必要がなく、家でできるのが利点です。しかし欠点もあり、まだ日本では保険適用外の治療となるため、2年で10万円から数十万円という高額な費用がかかります。もう数年すれば保険治療も可能になると言われており、そうなれば注射と同じく総額数万円で治療を受けられるはずです。
なお減感作療法は、アレルギーの原因を体内に取り込むという性質上、アレルギー症状のシーズンに行うと症状を悪化させる可能性があるため、シーズン外のタイミングからスタートすることになります。今辛いから何とかして! という類の治療ではないので注意が必要です。
……以上、花粉症対策に関する情報のまとめでした。結論から言うと、「いずれにしても結構な金がかかる」のです。国策で植えられたスギのせいで多くの人が苦しんでいるのに、通常の医療と同額の支払いが求められるのは変じゃないの? 何で国はもっと本気で対策しないの? というところにお気づきいただければ幸いです。たぶん偉い人は老人だから花粉症もちが少ないんですよ。
※ 今回の記述はわかりやすさを重視するため、治療法や科学的根拠について一部省略または近い内容に置き換えてお伝えしている部分があります。詳しいことを知りたい方は、用語などで検索して調べてみてください。