JINSとZoffのプロモーションのおかげで、一気に知れ渡ったPC用のメガネ。ブルーライトを吸収または反射して目に入る量を減らすことで、疲れを軽減させようというものです。そこの詳しい仕組みの説明は置いといて、今回はPC用メガネの中でも、度付きのものを選ぶ際に注意すべきことを、私の体験談を交えてお話しします。
※ この情報は2012年12月7日時点のものです。以後は新商品が発売されラインナップが変わる可能性があります。
■ まずは有名なPCメガネ製品2種をチェック
まずPC用メガネで有名なのは、先に挙げたJINSとZoffでしょう。この2つは激安メガネチェーンとして人気が高まっているチェーン店です。まずはその2つの内容をチェックします。
・Zoff PC http://www.zoff.co.jp/sp/zoffpc/
度付きのレンズは、サングラスっぽいカラータイプと、透明感のあるクリアタイプがあります。仕組みとしては、カラータイプはブルーライトを吸収、クリアタイプは反射することで、目に入るブルーライトを低減します。ブルーライトのカット率は、カラータイプが約50%、クリアタイプが約37%とされています。
ここで注目しておきたいのが、選べるレンズの種類です。度付きのレンズの場合、カラータイプは屈折率1.60の球面レンズ、クリアタイプは屈折率1.60の片面非球面レンズのみとなっています。つまりレンズは選択の余地がありません。
屈折率は、高ければ高いほどレンズを薄くできます。視力の悪い方は、なるべく薄いレンズを使うために、屈折率の高いレンズを使っているかと思います。薄くて軽いレンズを作るにはとても重要な部分なのですが、高い屈折率のレンズほど高価になります。Zoff PCの1.60というのは、特に薄型でもなく標準的なものです。
球面・片面非球面というのは、レンズ周辺部のゆがみを減らす効果が得られるレンズの構造です。球面レンズが最もゆがみが大きく、片面非球面になるとそれが軽減されます。さらに両面非球面レンズはもっとゆがみを少なくできますが、Zoff PCでは対応していません。
・JINS PC http://www.jins-jp.com/jins-pc/
お次はJINS PCです。こちらも度付きのレンズは吸収型のライトブラウンと、反射型のクリアの2タイプ。カット率はライトブラウンが50%、クリアが30%としていて、Zoff PCと同じ傾向になっています。
選べるレンズは、いずれも屈折率1.60または1.67の片面非球面レンズです。高めの屈折率のレンズを選べるので、強めの度のレンズを入れる場合にはJINS PCの方が有利と言えます。またカラータイプでも片面非球面が選べるので、より自然な視界を得られるかと思います。ただこちらも両面非球面レンズまでは選べません。
■ 最初に買ったのはZoff PC。しかし大きな落とし穴が……
さて、ここからは私の体験談。とりあえずPC用メガネを使ってみたいということで、大した下調べもせずに店が近かったZoff PCを選びました。フレームを選び、カット率の高いカラータイプを選んだ時点でレンズが決まっていたためか、店員さんはレンズの説明を一切しませんでした。最後の最後に自分で製品詳細を見て、「屈折率1.60の球面レンズのみ」であることを知りました。
実はこの時点で、買うのを止めようかと思いました。普段使っているメガネが結構こだわって選んだ屈折率1.70の両面非球面レンズだったため、屈折率1.60の球面レンズでは見え方が大きく違うのが明らかだったからです。でも、最初なので1つ買ってみてもいいかな、と軽い気持ちでそのまま発注。お値段も15,000円ほどで、メガネとしては十分激安の部類です。
数日後、完成したメガネをお店で受け取り、フィッティングをしたわけですが、その時点で「あ、これは使い物にならない」と感じました。予想どおり、レンズ周辺のゆがみが普段使いのメガネと違い過ぎて、頭がクラクラするのです。ことに私は強度の近視で(視力は0.02くらいです)、1.60の屈折率ではかなり分厚いレンズになります。
これがあるいは、JINS PCの屈折率1.67、片面非球面レンズであれば、そこまでの差は感じなかったかもしれません。でもおそらく見え方の違いは感じるはずで、ZoffがダメならJINSで! とは思いませんでした。
Zoffの名誉のために言っておくと、これはZoff PCが悪いのではなく、私の体と環境に合わなかったということです。度付きでも軽度の近視であれば、低い屈折率のメガネで十分ですし、その分ゆがみも少なく感じるので、違和感は少ないはずです。ただ強度の近視の方にはオススメできないよ、ということです。
ともかく無駄な買い物になってしまったわけですが、私は落ち込むことなく、もっと自分に合ったPC用メガネを探し始めました。その時に真っ先に浮かんだのは、「JINSやZoffのような激安店でもPC用メガネを作っているんだから、一般のメガネ店が扱う一流メーカーレンズでもブルーライトカットのレンズがあるのではないか」ということです。調べてみると案の定、どこのメーカーでもブルーライトカットのレンズを作っていました。
■ 最高級のメガネをPC用メガネにする!
たとえば私が以前から気に入って使っているHOYAのレンズでは、「ヴィーナスガードコート ラピス」というレンズコートで対応しています。
http://www.vc.hoya.co.jp/lens/product/venusguardcoatlapis.html
レンズコートというのは、傷やホコリが付きにくいとか、曇りにくいとかいう効果が得られるものです。激安店のメガネのレンズはこのコーティングが貧弱なため、痛みやすく汚れやすいという傾向があります。私はこれが嫌で、常に最高のコーティングのレンズを選ぶようにしていて、特にHOYAのコーティングがお気に入り、というわけです。
これらレンズメーカーのコーティングでのブルーライト対策は、反射タイプとなるのがほとんどです。メーカーによっては、さらにカラーも入れることで効果を高められるものもあります。ニコンの「シークリア ブルー」は特にそこを強調しています。
http://www.nikon-lenswear.jp/products/coating/seeclearblue.htm
といった品物があるということがわかったので、早速メガネ屋に向かいました。今回は私がお気に入りの、軽くて素晴らしくしなる性質のフレーム「ケータイFlex」を販売しているビジョンメガネさんへ。こちらも安さがウリのチェーン店ですが、レンズを細かく指定したところ、店長さんが本店にまで問い合わせて対応してくれました。
選んだレンズコートは、上記の「シークリア ブルー」。さらにレンズそのものは、性能もお値段も最高峰のニコン製レンズ「シーマックス」を選びました。いつの間にやら「シークリア ブルー プレミアム」という上位コーティングが出ていましたが、購入時点においては「シークリア ブルー」と「シーマックス」はおそらくPC用レンズとしては最高級の組み合わせです。Zoff PCの失敗があったので、今回は一切妥協せず行ってみましょうよ! という路線です。
http://www.nikon-lenswear.jp/products/singlefocus/seemax.htm
「シークリア ブルー」は反射タイプで、ブルーライトカット率は10%と、先の2つに比べると低めのカット率になっています。「シーマックス」は屈折率1.74の両面非球面で、メガネ用レンズとしてはほぼ最高のスペックです。フレームも合わせて、お値段は約50,000円。Zoff PCを3つ買ってもまだお釣りがくるお値段ですが、最高級品で固めた割には安く済んだ方です。
こちらの使用感はやはり素晴らしいです。むしろ普段のメガネよりも見え方が自然で、それがむしろ違和感になるほどです。ブルーライトのカット率が低いこともあってか、ぱっと見た感じでは普通のメガネと違いがわかりません。個人的にはあくまでPC用で、外出時には以前のメガネを使うので、何色に見えても構わないのですが……。ともあれ、実に快適なPC用メガネを手に入れました。
■ 色付きよりもクリアタイプの方が上等? そんなことはありません
個人的に満足の行くものが手に入ったので体験談はここで終わりです。強度の近視の方には参考にしていただけるかと思います……が、じゃあ軽度の近視の方や、あるいは度なしでもいいという方は、色付きとクリアタイプのどちらを選ぶべきか? というお話しもしておきたいと思います。
「透明なのにブルーライトだけ通さないなんて超すごいじゃん! 色付きの意味あるの?」というのが一般的な印象だと思います。そこはそれ、クリアタイプにもちゃんと長所と短所があります。
長所はなにより、外から見て色味がないこと。普段使いのメガネにしても、他人から見て違和感がないことです。いちいちメガネを付け替えたくない、という気持ちはメガネユーザーとしてはよーくわかりますので、そういうポリシーで使いたい方はこちらがいいです。
そして短所ですが、「反射する」という性質がネガティブです。レンズがブルーライトを反射するということは、レンズが鏡のように青くキラキラ光ってしまうということです。特に斜め後ろからの光が目に近い側のレンズに当たると、それがそのまま反射されることになり、メガネのギラつきとして感じられます。普通のメガネでそういうことを感じないのは、反射低減加工がされているためです。クリアタイプのレンズは、ブルーライトを反射するという、あえて通常とは逆の加工をしているわけです。
屋外で日光が後方から当たると、メガネの端のほうに青いプリズムのような光がはっきり見えます。これはおそらくブルーライトのカット率が高いほど強く見える(反射するブルーライトが増えるため)ので、屋外では違和感を覚えることもあります。またPCに向かっていて、斜め後方や上方に照明があったりすると、気になるかもしれません。
色付きのレンズであれば反射はしませんので、こういった問題は起きません。屋内で普通のメガネと付け替えて使う前提であれば、色付きを選ぶ方が正解だと思います。
またレンズのタイプを問わずPC用メガネの共通の短所は、言うまでもなく世界が茶色っぽく見えることです。色付きのレンズであれば見たままの色ですが、クリアタイプでも、白いものははっきりと黄色がかって見えます。私が使っている10%カットのレンズでさえ、文庫本の白いページを見ると、はっきりと黄色く感じられます。それがストレスに感じることはないですが、普通のメガネに変えると違いははっきりとわかります。
これはブルーライトを低減するという原理上、当たり前のことです。むしろ変わらなければ嘘です。カット率相応に色味が変わると思ってもらって構いません。私の場合、取材写真をチェックする時、PC用メガネのままでやると色味がやや嘘になるので、念のため普通のメガネに変えて作業することもあります。それじゃ本末転倒じゃんって気もするんですが、一時的には仕方ないかなあと割り切っています。
まとめると、使用感の快適さを求めるなら色付き、他人から見てサングラスっぽく思われたくなければクリア、という選び方でいいと思います。何となくクリアの方がよさそうだから、とテキトーに買うと後で後悔することもありえるのでご注意を。
参考までに、今回作ったZoff PCで作ったメガネと、ニコンレンズのメガネ、私が普段使っている普通のメガネの3つを順に並べてみます。ニコンレンズはクリアタイプですが、レンズを通して見える机の色味がかすかに変わっているのがわかると思います。
■ 結局、PC用メガネの効果はあるのか?
お読みいただいている皆様が最終的に聞きたい話は、PC用メガネの効果はあるのかということだと思いますが……ごめんなさい、私にはよくわかりません。私は酷い肩こり持ちですが、メガネを変えたからよくなった、というほどの違いは感じません。あとドライアイ気味なのがよくなったかというと、そうでもなく。
どちらかといえば、レンズよりも顔に合ったかけ心地のいいフレームを選ぶ方が重要かなあと思いました。という、どうしようもない結論で締めさせていただきます。
zoffで色付きのメガネを購入し、レンズの端を通して見ると違和感があることに買ってしばらくしてから気づきました
それまで非球面レンズしか使ったこと無かったので球面か非球面がこんなに重要なことだとは想定外です
使い物にならないかもしれないくらい重要なことを買う前に伝えてもらえなかったことにがっかりです